[監督] ワンウェーオ・ホンウィワット、ウェーオワン・ホンウィワット(Wanweaw and Weawwan Hongvivatana/วรรณแวว และ แวววรรณ หงษ์วิวัฒน์)
[出演者] ワンウェーオ・ホンウィワット、ウェーオワン・ホンウィワット(Wanweaw and Weawwan Hongvivatana/วรรณแวว และ แวววรรณ หงษ์วิวัฒน์)
[評価] ★★★
タイとイギリスの合作映画。インディーズのドキュメンタリー作品。双子の姉妹が、イギリスのロンドンから自分たちの家のあるタイのバンコクへ列車で戻る一ヵ月間に及ぶ旅を描いたもの。途中、フランス、ドイツ、ロシア、モンゴル、中国、ベトナム、ラオスを経由する。
ワンウェーオ・ホンウィワット、ウェーオワン・ホンウィワット両監督の長編デビュー作。イギリスthe University for The Creative Arts (UCA)における、MA Artist's Film Video and Photographyのthe directors' projectによるもの。
おそらく、かなり観光もしているのであろうが、観光地の映像は極力排除し列車内の映像を中心に構成している。旅にハプニングはつきものなので、作品は最後まで飽きずに観ることができる。特に、ロシアの駅で撮影が見つかり、鉄道公安?に連れて行かれても隠しカメラで撮影を続ける根性には拍手。もしかして、確信犯か?罰金500ルーブルを取られたが、日本円にすると1,500円強だ(2013年12月現在)。映像もおもしろい。アジア圏内に入ってからの映像が少ないのは残念。原題は英題と同じで、「(無事に着けるように)祈っていてください」というような意味。
ホラー作品。チャンタリー(Amphaiphun Phimmapunya)は父(Douangmany Soliphanh)と二人で暮らしていた。母は、彼女が幼いころ死んでしまったのだ。だが、彼女にはなぜか母の記憶がなかった。チャンタリーは病気で毎日父から与えられた薬を飲んでおり、家の外へは出してもらえなかった。そんな父をチャンタリーは…というストーリー。
ホラーといえばホラーではある。だが、怖さはない。本質は、親子愛ということなのであろうか?ストーリーの舞台はほとんどが自宅で、低予算で作ったのであろうことが分かる。監督の言によると、製作費用はUS$5,000で撮影場所は監督の自宅だったとのこと。そして、父と母の関係、父と娘の関係、娘と母の関係がいまひとつ分からない。そして、おじさんと娘の関係もはっきりしないような。それから、突然父親がけがをしてしまうし、チャンタリーはいつの間にか○○○しまっているし。
また、現世は夜で暗いのに、霊が出てくる場面では真昼間のように明るくなるのはかなり違和感がある。このシーンには、もう少し工夫が必要だ。主演のチャンタリーを演じた女優は素人っぽいのだが、この作品には雰囲気がぴったりの人だ。
全体的にはストーリー的にはいまひとつなのだが、不思議なホラーとしてそこそこ楽しめる。この作品は、ラオス初の純粋ラオス製(film to be written and directed)ホラーで、ラオス初の女性監督による作品だそうだ。原題の「チャンタリー」とは、主人公の女性の名前。
製作国は、オーストラリア、タイ、ラオス。ドラマ。ラオス北部の山奥の村で、出産時に片方は亡くなってしまったが双子が生まれる。双子は、不吉なものとして忌み嫌われていた。大きくなってからも少年Ahlo(シッティポン・ディーサムー)は、母親(アリス・ケオハウォン)からは大切にされたが、父親(サムリット・ワーリン)や祖母( ブンシー・インディー)からはあまりよく思われていなかった。ある時、Ahloが住んでいた一帯にダム建設計画が持ち上がり、立ち退きを迫られることになった。その移住の途中、母親は事故で死んでしまう。たどり着いた村で、ロケット祭りが行われるという。Ahloは、祭りで優勝すると大金がもらえると知り…というストーリー。 タイではSF系のみで上映?2013年の第11回バンコク世界映画祭(World Film Festival of Bangkok)でオープニング作品となった。言語はラオス語。 作品の中では語られていないが、祖母の衣装からAhloはアカ族という少数民族だ。作中では、アカ族のブランコ祭りの様子も描かれている。祖母の帽子の飾り(元来は、本物の銀貨なのだが)が、ストーリーの進行に従って少なくなり(生活のために少しずつ現金に換えていったため)、作品の最後には全てなくなってしまった。現実の世界でも、同様のことが起こっている。例えばタイのアカ族の場合、多くの人たちの帽子に取り付けられているのは、銀貨であったものがほとんど価値のない旧5バーツ硬貨になってしまっている。貨幣経済に取り込まれ、みんな現金化してしまったためだ。実際に、双子も忌み嫌われていた。確か、この作品のように双子の両方とも殺さなければならないという習慣ではなく、片方を殺さなければならないというものであった気がする。 作者がどこまで考えて描いたかは分からないが、この作品にはいろいろな要素が含まれている。少数民族、ダム問題、ベトナム戦争当時の未処理爆発物、汚職?、ロケット祭りなどなど。 Ahlo少年役をやったシッティポン・ディーサムーや少女キア役のルークナム・ケーオサイナームは良かった。この二人はラオス人だ。ルークナム・ケーオサイナームが大人をだますために踊ったダンスは、最高に楽しかった。 母親役のアリス・ケオハウォンが、出産シーンを初め何回か裸を見せている。裸を見せているのでラオスやタイの人ではないであろうと思ったが、血的にはラオス人であった。彼女の家系はラオス難民(ベトナム戦争時にアメリカのCIAに協力した)で、オーストラリアに移住したのだそうだ。地味であったが、父親役のサムリット・ワーリンもいい味を出していた。顔の表情で複雑な心情を語らなければならない、難しい役であったと思う。この人はタイ人だ。 キアのおじさん役をやったテープ・ポーガームは、タイの有名なコメディアンである。日本でDVD化された「キラータトゥー(Kiiler Tatoo)」<2001年>など、数多くの作品に出演している。驚いたのは、この人はつるつる頭がトレードマークなのだが、本作ではぼさぼさのカーリー・ヘアーのような頭で出てきたことだ。タイ人の監督なら、こういう使い方はしなかったであろう。 さて、本作で一番キャラクターがおもしろかったのは、祖母役のブンシー・インディーだ。最初は双子のAhloを不吉な存在として嫌っていたのだが、常に家族の一員としての役割を果たしていた。とても愉快な存在だったのだが、残念なことに彼女の役柄に関しては作中では十分に活かされていたとは言い難い。彼女はラオス生まれの女優だそうで、フィルムの世界へ入ったのは50歳の時だそうだ。日本で公開された「シチズン・ドッグ(Citizen Dog)」<2008年>や日本の映画祭で上映された「メコン・フル・ムーン・パーティー(Mekhong Full Moon Party)」<2002年>などにも出演している。 作品は、ラオスからタイのイサーン(東北部)にかけて広く行われている雨乞い、五穀豊穣を願う祭りである「ロケット祭り」がクライマックスだ。作中ではほとんど祭りについての解説がないが、ロケットの打ち上げに失敗すると泥水の中へ突き落とされてしまう。また、打ち上げ時に、人間が火のついたロケットをぎりぎりまで支えているとは知らなかった。作品ではAhloが見よう見まねで作ったロケットを打ち上げることになるのだが、現実的にはいくらなんでも素人がロケットを作るのは無理である。火薬から作り始めるのだから、下手にやったら爆発してしまうであろう。 作品全体としては、ラオス北部の素朴さと自然の美しさが出ていて映像がとてもきれいだ。ストーリー的には少しおとなしいかもしれないが、ある意味、異国情緒と自然の中の人々の生活風景を楽しむことができる。ラオス以外に、タイでも撮影が行われたらしい。タイでの興行収入はUS$8,479。原題(タイ題)は、直訳すると「徳がロケットにくっつく」となるのだが。